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[第46回] 特許事務カレンダー

今回のお題

翻訳プロジェクト担当のUです。
前回予告していました「特許事務カレンダー」についてご紹介いたします。

特許の出願後、指定期間内にさまざまなアクションをしなければなりません。
(特許の登録までのステップはコチラの記事をご参照ください)
期間内にアクションしなかった場合、その出願が無効となってしまいます。

出願人の代理人である特許事務所の大切な業務のひとつが、この期限管理です!

期限管理には主に「審査請求期限」、「特許庁への応答期限」、が挙げられます。

以前、特許事務所で勤めていた際に、期限管理にも従事していました。
10数年前の経験なので、現在は管理方法が異なるかもしれませんが、当時の経験をふまえて今回の記事を書き進めて行きます。

特許事務所ってどんなところ?

本題に入る前に、特許事務所の環境についてご紹介します。

特許事務所は、
 明細書チーム・・・技術的内容を担当するチームで、理系出身者が多いです。
 事務チーム・・・手続きを担当するチームで、文系/理系の垣根はあまりないです。
2つのチームに分かれているところが多いです。

きわめて秘密性の高い情報を取り扱う特許事務所では、様々なセキュリティ対策が実施されています。
私が勤めていた特許事務所では、以下のような対策が施されていました。

監視カメラの設置
事務所内が24時間365日撮影されていました。

外部ネットワークからの遮断
特許庁へのオンライン手続き用PC、公報入手や情報収集のための検索用PC、この2台以外はインターネットに接続されていませんでした。

スマホ、携帯電話の持ち込み禁止
個人デバイスはロッカー内に置き、執務スペース内への持ち込みは禁止でした。

事務所内備品の持ち出し禁止
鉛筆ですら持ち出し禁止でした。
事務所内で使用する物は全て支給品でした。
それまで勤めていた職場では、自分の気に入った筆記用具を持ち込んで使用していたので、最初は違和感がありました。
入所間もない頃に一度、業務フローを書き込んだノートを自宅で復習するために自宅へ持ち帰った事がありましたが、翌日上司に物凄く叱られました。。。

FAX
クライアント(=発明人)との資料のやり取りは、基本的に郵送でしたが、緊急を要する場合はFAXで行っていました。
FAX通信のセキュリティ性は絶対的ではありませんが、電子メールよりも機密性が高いらしいです。
ちなみに、受領物(いつ、だれから、なにが送られてきたか)/発送物(いつ、だれに、なにを送ったか)は全て記録していました。

極端に言えば、事務所は外部から断絶された閉鎖的空間でした。
セキュリティ性の高いネットワークサービスも多くありますが、私が勤めていた事務所ではアナログなやり方で業務を進めていました。
今振り返れば、技術資料もデジタルではなくハード(現物の書籍)ばかりでした。
デジタルによる利便性よりも、ハード(現物)によるセキュリティ性を重視した結果だといえます。
一概に「現物=機密性に優れる」にはなりませんが、情報を現物にすることにより、万が一情報が漏洩した場合、流出元が特定しやすいと言えるかもしれません。

特許庁への応答管理

本題の「特許庁への応答管理(期限管理)」についてです。
これは、事務チームの守備範囲です。

上記のようなアナログ環境の中で、どのようにスケジュール管理をしていたかというと、カレンダー現物を見て、応答期限日数を数えて期日を把握していました。。。
本当にアナログなやり方です。

当時の特許事務所業界では、下敷き型の特許庁開庁カレンダーなるものがありました。
(日本弁理士会 or 発明協会が発行していた記憶があります)
今ではこのようなアナログ手法は時代遅れなのか、インターネットで検索してもヒットしませんでした。。。

本来は、このカレンダーをネタとして記事を書くつもりでしたが、残念ならが入手出来なかったので「特許事務所がどのように期日管理をしているか」で進めています。
ちなみに、この下敷き型の特許庁開庁カレンダーは、1行=1週間(7日間)の形式ではなく、1行=10日間の形式で書かれており、該当日の下行に進むにつれて10日後(当日を含まない)が一目で分かるようになっていました。

(特許庁開庁カレンダーのイメージ)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
31 1 2 3 4 5 6 7 8 9


いずれにせよ、特許庁からの通知を受けた際、応答期日を把握し、クライアント(=発明人)との打合せ日、応答書類の作成期日等をスケジューリングしていくわけです。

特許庁への応答期日

出願に対しての「ダメ出し」(=拒絶理由通知)を受けた際の期日管理がより重要になります。
出願に対して拒絶を受けた場合、技術的なアクション(=明細書内容の修正等)が必要になり、明細書チームとの連携が必須です。
(出願が認められた場合は、主に手続き的なアクション(=登録料の支払い等)が求められ、それほど時間を要しませんし、事務チーム内のみで完結します)

特許出願の拒絶理由通知への応答期間は、『拒絶理由通知書』の発送日の翌日から60日以内です。
(商標登録出願の場合は40日以内となります)

(『拒絶理由通知書』のサンプル)

『拒絶理由通知書』には
 この通知書の発送の日から60日以内に~
と記載されていますが、発送日の初日(=当日)は起算されません。

期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
(特許法第311号)

(例)
 発送日:2020121
 回答期日(60日):2020321

決戦は火曜日!

『拒絶理由通知書』は、インターネットを介しててオンラインで受領することができ、『拒絶理由通知書』の「発送日」は、オンラインで受領した日となります。
ここでポイントとなるのが、応答期日が何曜日になるか?です。

特許出願、請求その他特許に関する手続(以下単に「手続」という。)についての期間の末日が行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第一条第一項各号に掲げる日に当たるときは、その日の翌日をもつてその期間の末日とする。
(特許法第32項)

つまり、応答期日が土曜日/日曜日にあたる場合は、土日明けの月曜日が応答期日になります。
ここから逆算すると 火曜日に受領すれば、期日が土曜日になり、土曜日/日曜日は特許庁が休みのため、次の月曜日までに応答すればよい という事になり、応答期間を実質的に延ばせる事が出来ます。

上の例では、
 発送日:2020121日(火曜日)
 回答期日(60日):2020321日(土曜日)← 特許庁お休み
 実際の回答期日:2020323日(月曜日)
になるワケです。

『拒絶理由通知書』には、その根拠として引用文献(だいたい公開されている公報です)が挙げられる事が多々あります。
『拒絶理由通知書』には引用文献は添付されていないので、該当する引用文献を入手しなくてはなりません。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)から公報を入手しますが、地味に時間がかかります。。。
(対象となる引用文献が多い時は、結構滅入ります。。。)

ここから 特許事務所は火曜日が忙しい! という事になります。
特許業界では「あるある」なので、もし周りの方に特許事務所にお勤めの方がいれば、火曜日にお誘いするのは避けた方が良いと思います。

次回は、「特許証:中国は豪華!アメリカはオシャレ!日本は。。。」についてご紹介できればと思います。

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筆者プロフィール

沖縄出身。

進学を機に十代から沖縄を離れ、沖縄県外での時間の方が長くなりました。(海外、名古屋、東京)
夏になると帰省したい気持ちが強くなります。ここ数年実現出来てないので「今年こそ、夏は島へ帰る!」と意気込んでいます。

翻訳プロジェクトの新規開拓/提案/運用を担当しています。
特許事務所での経験を活かした翻訳サービスを日々思案中。