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[第40回] 出願から登録まで


今回のお題

翻訳プロジェクト担当のUです。

前回予告していました「出願から登録まで」についてご紹介いたします。

学校受験?

特許として認められるためには、

  1. 経済効果があり、かつ実現可能なもの
  2. 新しいもの
  3. その技術分野の専門家が容易に思いつかない高度なもの
  4. まだ誰も出願していないもの
  5. 公序良俗に反しないもの

の5つの要件を満たす必要があると、以前お伝えしました。

この5つの要件を満たすからといって、自動的に登録される(=権利化される)わけではありません。
登録されるまでには、おおまかに8つのステップがあります。
個人的には、学校受験に似ていると捉えています。

ステップ1: 発明の完成

いわずもがな、そもそも「ひらめき」が無ければ権利を得ようとは思いませんよね。

ステップ2: 出願

特許庁の定める様式にそって出願書類を作成します。

出願する際には、特許出願料として14,000円を特許庁へ支払います。
学校受験での、願書手続だとお考えください。

ただし、願書を出すにもお金がかかります。
この時点では、受験料は含まれていません。

ステップ3: 方式審査

出願書類が様式通りかがチェックされます。

この時点では、特許の具体的な内容(=5つの要件を満たしているか?)に関してはチェックされません。
つまり、書類が手続的/形式的に不備が無いか? の審査です。

出願手続は、パソコンを介してオンラインでも可能です。
万が一、様式に不備があった場合は、出願手続時にエラーメッセージが表示されるので、方式要件を満たさないまま出願することは少ないと思います。

もちろん、書面(紙)での出願も可能ですが、現在はオンラインでの出願(電子出願)が主流です。
尚、書面出願の場合、特許出願料14,000円に加えて、電子化手数料として1件につき1,200円+書面1枚につき700円が必要となります。

ステップ4: 出願公開

特許出願の日から1年6か月(18か月)経過後2週間以内に、特許出願の明細書等が掲載された『公開特許公報』が発行され、出願内容が一般に公開されます。
公開されただけで、まだ権利(特許権)は得ていませんが、公開することにより、重複研究や重複出願などを回避することができます。
特許権は、前回紹介した通り、出願日が早い者が得ます! (先願主義)。

尚、出願人の請求により出願公開を早める(=18か月より前)こともできます。
公開することにより補償金請求権が生じるので、早期公開のメリットがありますが、話が脱線するので早期公開に関してはまた別の機会に。

ステップ5: 審査請求

出願しただけでは、特許の内容に関する本格的な審査は受けられません。
審査を受けるために、特許出願の日から3年以内に審査請求をしなければなりません。
審査請求あり次第、審査が開始されるので、出願から3年を待つ必要はありません。
(早く審査を受けることで、早く権利化されることにつながります。)

審査請求時に、138,000円+請求項数×4,000円を特許庁へ支払います。

  • 例) 5つの請求項を含んだ出願の場合:
    • 138,000円 + (5×4,000円) = 158,000円

もちろん、審査を請求しただけで、この時点では権利化されるかは分かりません。
学校受験での、受験手続/受験料だとお考えください。

ステップ6: 実体審査

いよいよここからが本番です!
出願された発明が、5つの要件を満たしているか? が特許庁によって審査されます。

でも、学校受験とは異なり、一発勝負ではありません。
もし出願内容が要件を満たしていない場合、即不合格ではなく、内容を修正するチャンス(追試)が与えられます。

ざっくりいうと、

  • この部分は、すでに出願されている発明と似ていると思うけど、いったいどう違うの?

といったような指摘を受けた場合、それに対する弁明の余地が与えられます。

特許庁からの指摘は、『拒絶理由通知書』という書類をもって通知されます。
これに対して、出願人は『拒絶理由通知書』の発送日の翌日から60日以内に『補正書』『意見書』をもって回答しなければなりません。
申請により、回答期間を最長2か月まで延長できますが、ここでは割愛します。

拒絶理由通知の回数に制限は設けられていませんが、実質は1回~2回、多くて3回のようです。
これは、おおよそ3回の拒絶理由通知以内に、合格(特許査定) or 不合格(拒絶査定)が下されるからです。

尚、不合格(拒絶査定)の場合でも、「拒絶査定不服審判」というかたちで、さらに争うことが可能です。

ステップ7: 特許査定

審査の結果、拒絶の理由を発見しなかった(=出願された発明が5つの要件を満たしている)、もしくは、当初は問題があった(拒絶理由通知をうけた)が補正により解消した場合、特許査定が下されます!

ただ、この時点ではまだ権利は発生していません。
学校受験での、合格通知を受けたといったところです。

ステップ8: 特許登録

合格通知を受けたので、あとは入学金/授業料を支払います。
出願人は『特許査定謄本』の送達があった日から30日以内に、特許庁に所定額の特許料を納付しなければなりません。

特許料が納付されると、特許原簿に「特許権の設定登録」が行われ、特許番号が付されます。
これにより、特許権が発生します!

また、『特許公報』が公開され、出願人に『特許証』が交付されます。

特許権の存続期間と特許料

特許料は、最初は第1~3年分の特許料を一括して納付し、その後は1年毎or複数年分を一括して納付します。

* 特許料は、審査請求日が2004年(平成16年)3月31日より前or後で異なります。
* ここでは、2004年(平成16年)3月31日より後に審査請求した場合の特許料を説明します。

特許料を説明する前に、特許権の存続期間について説明します。

特許権の存続期間は、特許を出願した日から20年です。
これは、どんなに画期的で優れていたとしても、20年間しかその発明は保護されません。

ただ、一定の分野(医薬品や農薬など)に限り、安全性の確保や他の法律(薬事法など)の規定により、特許発明の実施ができない場合があるので、延長登録出願により5年を限度として存続期間を延長することができます。
つまり、特許料は理論上、最長で25年目まであることになります。
(出願日と同日に登録されることは実際にはあり得ませんが。。。)

各年の特許料金は以下の通りです。

第1年~第3年 毎年10,300円 + 請求項数×900円
第4年~第6年 毎年16,100円 + 請求項数×1,300円
第7年~第9年 毎年32,200円 + 請求項数×2,500円
第10年~第25年 毎年64,400円 + 請求項数×5,000円
  • 例) 5つの請求項を含んだ出願の場合:
    • 登録時: {10,300円 + (5×900円)} × 3年分 = 14,800円 × 3年分 = 44,400円 (第1年~第3年)
    • 以降: 16,100円 + (5×1,300円) = 22,600円/年 (第4年、第5年、第6年)

まとめ

いかがでしょうか、学校受験と似ていると思いませんか?

  1. 発明の完成 (受験勉強)
  2. 出願 (願書提出)
  3. 方式審査 (願書に不備がないか)
  4. 出願公開 (受験票の発行)
  5. 審査請求 (試験会場へ向かう)
  6. 実体審査 (試験)
  7. 特許査定 (合格)
  8. 特許登録 (入学手続き)

ちなみに、2018年の特許査定率(合格率)は75.3%です。
このうち、拒絶理由通知を受けずに特許査定(一発合格)された率は15.2%で、一発で特許と認められるのは狭き門といえます。

今年(2019年)4月1日より、新たな特許の手数料の減免制度が開始しました。
減免対象が拡大され、申請手続が簡素化されます。
詳細については私も勉強中ですが、減免対象が、これまでの「一部の」中小企業だったのが、「全ての」中小企業に拡充されたようです。
これにより、今後、日本の特許出願数は増えていくかもしれません!
2018年の出願数は313,567件で、2017年よりも若干減少しています。

次回は、「公報の種類」についてご紹介できればと思います。

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筆者プロフィール

沖縄出身。

進学を機に十代から沖縄を離れ、沖縄県外での時間の方が長くなりました。(海外、名古屋、東京)
夏になると帰省したい気持ちが強くなります。ここ数年実現出来てないので「今年こそ、夏は島へ帰る!」と意気込んでいます。

翻訳プロジェクトの新規開拓/提案/運用を担当しています。
特許事務所での経験を活かした翻訳サービスを日々思案中。