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[第35回] 先願主義と先発明主義


今回のお題

翻訳プロジェクト担当のUです。

前回予告していました「先願主義と先発明主義」についてご紹介いたします。

ひらめき? 手続き?

前々回、特許として認められるための5つの要件のうち、

  • まだ誰も出願していないこと

があることをお伝えしました。

つまり、「ひらめき」を権利化するためには、

  • ひらめいたタイミングではなく、手続きをしたタイミング

がポイントになります。

例えば、AさんとBさんが同じ「ひらめき」を思いついたとしましょう。

  • Aさん
    • ひらめいたタイミング: 1月1日
    • 手続きをしたタイミング: 1月20日
  • Bさん
    • ひらめいたタイミング: 1月10日
    • 手続きをしたタイミング: 1月19日

この場合、

  • ひらめいたのはAさんが早い
  • 手続きをしたのはBさんが早い

となりますが、この「ひらめき」に対して権利を得ることが出来るのはBさんとなります。

先願(せんがん)主義

先願:
同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
(特許法第39条1項)

上記の例では、Aさんが先にひらめいていますが、手続きはBさんの方が早かったので、後にひらめいたにもかかわらずBさんが優先されます。
残念ならが、Aさんは手続きが遅かったので、権利を得る事は出来ません。
なんとなく理不尽に感じるかもしれませんが、ひらめいた時期は主体的要素 (私は~月~日にひらめいたんだ!) が含まれ、時期を特定するのは難しいため、客観的に立証可能な出願日が根拠とされます。
事務的で合理的な考え方だといえます。

日本も含め、世界中で先願主義が採用されています。

余談ですが、

  • 出願日が同日の場合は、どうなるの?

という疑問が出てきます。

インターネットを介した電子出願により、正確な出願時刻を記録する事は可能かもしれませんが、出願時刻を根拠に誰が先に出願したか? を言及することはありません。

同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
(特許法第39条2項)

もし、同日に、同じひらめきの出願が複数あった場合は、出願人同士が協議することになります。
協議決裂の場合は、そのひらめき自体が特許とすることができません。
喧嘩両成敗ですね。

先発明(さきはつめい)主義

* ネットで調べてみたところ、読み方が「さきはつめい」・「せんはつめい」の2つがヒットします。
* 私自身「さきはつめい」と読んでいたので、本ブログでは「さきはつめい」といたします。

出願タイミングを根拠とする先願主義に対して、先発明主義は、

  • ひらめいたタイミング

を根拠とします。

上記の例の場合、先にひらめいたAさんが優先されることになります。
一見、先にひらめいた人が優先されるので公平で人道的と思われるかもしれませんが、ひらめいた時期を特定するのは非常に困難です。
また、先にひらめいた人が優先されてしまうと、特許化された後で「それは、私が先にひらめいていました! なのでこのひらめきの権利は私にあります!」という事態が生じかねません。
そうなると、特許権の安定性が守られなくなってしまいます。

意外にも近年(2013年)までアメリカは先発明主義を採用していました。
世界で先発明主義を採用していたのはアメリカくらいだったので、これにより世界の特許制度が先願主義で統一されることになりました。

まとめ

今回は、

  • 特許は、「いつひらめいたのか」ではなく「いつ出願したのか」で権利者が決まる

という事を知って頂ければ幸いです。

次回は、「出願から登録まで」についてご紹介できればと思います。

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筆者プロフィール

沖縄出身。

進学を機に十代から沖縄を離れ、沖縄県外での時間の方が長くなりました。(海外、名古屋、東京)
夏になると帰省したい気持ちが強くなります。ここ数年実現出来てないので「今年こそ、夏は島へ帰る!」と意気込んでいます。

翻訳プロジェクトの新規開拓/提案/運用を担当しています。
特許事務所での経験を活かした翻訳サービスを日々思案中。