今回のお題
翻訳プロジェクト担当のUです。
前回予告していました「特許と認められるための条件」についてご紹介いたします。
前回、
特許は「高度なひらめき」
だが、
すべての「高度なひらめき」が守られる(=権利化される)わけではありません。
とお伝えしました。
では、どのような「ひらめき」が特許として認められるのでしょうか?
5つの要件
特許として認められるためには、特許法で定められる5つの「特許の要件」を満たさなければなりません。
特許と認められるためには、
- 経済効果があり、かつ実現可能なもの
- 新しいもの
- その技術分野の専門家が容易に思いつかない高度なもの
- まだ誰も出願していないもの
- 公序良俗に反しないもの
であることが必要です。(厳密には、出願書類が要件を満たしているか? 等の形式的な要件もありますが、ここでは発明の内容に関する要件のみをピックアップします。)
要件1: 産業上利用することができるか?
特許制度は、「産業の発展」を目的としています。
「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」
(特許法第1条)
よって、産業上利用することができる「ひらめき」でなければなりません。
特許法上の「産業」(industry)とは、工業だけでなく、農業、水産業、林業など幅広く含みます。
ちなみに、医療(手術、治療、診断等の方法)は含まれていません。
医療を産業とするか否かは国により見解が異なります(アメリカでは医療も特許化されます)が、現在の日本特許法では「医療は含まれない」と解釈されています。
但し、医療機器は特許として認められるので、医療特許は複雑といえます。。。
また、実現可能な「ひらめき」でなければなりません。
理論上は可能だったとしても、非現実的な「ひらめき」は特許として認められません。
例えば、地球全体を遮熱フィルムで覆って地球温暖化を防止する方法などは非現実的ですよね。
とはいえ、素人目には非現実的と思われるものでも特許化されているものもあります。
- 「台風防止装置」(特許第2727128号)
- 「地球の温暖化防止方法」(特許第3742868号)
脱線しましたが、「経済効果がある」&「実現が可能である」ことが求められます。
要件2: 新しいか?
客観的に新しい「ひらめき」でなければなりません。
(知財業界で「新規性」と呼ばれるものです。)
ここでいう「客観的に新しい」とは、「公然に知られていないこと」を意味します。
ざっくりと言うと、不特定多数に知られているか否か? がポイントとなります。
どのタイミンで「新しい」かは、「出願時において新しいか?」です。
尚、日本の場合は、日本国内or外国を問わず「公然に知られていないか?」が基準となります。
要件3: 進んでいるか?
容易に考え出すことが出来ない「ひらめき」でなければなりません。
(知財業界で「進歩性」と呼ばれるものです。)
何をもって「容易」と判断するかですが、
- いつ: 出願時において、
- どうやって: 世の中に知られている技術をベースに、
- 誰が: その分野の専門家が、
容易に思いつくか? がポイントとなります。
正直、とても漠然とした概念です。。。
私も「進歩性」については正確に理解出来ていませんが、「その技術分野の専門家が容易に思いつかない高度なもの」とお考えください。
要件4: 他に誰かが出願していないか?
まだ誰も出願していない「ひらめき」でなければなりません。
(知財業界で「先願主義」と呼ばれるものです。)
これは、
- いつひらめいたか・・・先発明主義
ではなく、
- いつ出願したか・・・先願主義
で権利者を決める考えです。
つまり、先にひらめいていたとしても、先に誰かに出願されていた場合、「先に出願した方」が優先されます。
ひらめいた時期を特定するのは難しいため、出願日が根拠とされます。
(早くひらめいても、早く手続きをしなくては権利を得られないという事です。)
ほとんどの国で「先願主義」が採用されていますが、近年(2013年)までアメリカは「先発明主義」を採用していました。
要件5: 公序良俗に反していないか?
先に挙げた4つの要件を満たしていても、公序良俗を害する恐れのある「ひらめき」は特許として認められません。
例えば、紙幣偽造技術や違法薬物製造方法等、法律で製造・販売・使用等を禁止されているものの発明は、特許を受けることができません。
またまた脱線となりますが、「殺傷や破壊を目的とする兵器や軍事技術は特許と認められないの?」と疑問に思う方もいると思います。
これは、特許として認められます!
ちょっとしっくり来ませんが、防衛産業や兵器産業の発達が期待できるので特許として認めるとの見解のようです。
尚、アメリカでは、安全保障上の観点から軍事技術の発明は非公開となっています。
なぜか、日本では公開されています。
まとめ
以上、特許と認められるための条件を紹介しましたが、皆さまがイメージしている条件と異なる箇所は無いのではないでしょうか?
前回ご紹介した通り、
特許は「高度なひらめき」
です。
「高度な」という言葉からイメージする通り専門性が高いものではありますが、要件1で挙げた通り「産業の発展」(=私たちの生活を豊かにすること)を特許は目的としているのです。
次回は、「特許と実用新案の違い」についてご紹介できればと思います。
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筆者プロフィール
沖縄出身。
進学を機に十代から沖縄を離れ、沖縄県外での時間の方が長くなりました。(海外、名古屋、東京)
夏になると帰省したい気持ちが強くなります。ここ数年実現出来てないので「今年こそ、夏は島へ帰る!」と意気込んでいます。
翻訳プロジェクトの新規開拓/提案/運用を担当しています。
特許事務所での経験を活かした翻訳サービスを日々思案中。