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[第30回] 特許と実用新案の違い


今回のお題

翻訳プロジェクト担当のUです。

前回予告していました「特許と実用新案の違い」についてご紹介いたします。

特許が「高度なひらめき」であるのに対して、実用新案は「ちょっとしたひらめき」といったところです。

実用新案の方が取得しやすいのに??

前回、特許として認められるためには、

  1. 産業上利用できること
  2. 新しいこと (新規性)
  3. 進んでいること (進歩性)
  4. まだ誰も出願していないこと (先願主義)
  5. 公序良俗に反しないこと

を満たさなければならないとお伝えしました。

これに対して、実用新案は、

  1. 新しいこと (新規性)

を満たす必要はありません。
ずばり言うと、実用新案の方が取得しやすいです!

日本特許庁の発表によると、一昨年度(2017年度)の出願件数は、

  • 特許: 約31.5万件
  • 実用新案: 約0.5万件

だったようです。

実用新案の方が取得しやすいのにも関わらず、出願件数は特許の2%もありません。
なぜ、実用新案の出願数は少ないのでしょうか?

似て非なるもの

特許と実用新案は、よく似た制度ですが、

  • 保護対象
  • 取得するためのハードル(審査)
  • 取得するまでの時間
  • 有効期間

等が異なります。

保護対象 実用新案は、特許と比べて保護対象が限定的です。
  • 特許: 「物」と「方法」
  • 実用新案: 「物」のみ
また、コンピュータープログラムは、特許では「物」として扱われますが、実用新案では「物」として扱われません。
取得するためのハードル(審査) 実用新案は、審査がありません。
極端に言うと、出願するだけで取得する事ができます。
特許は、特許庁の審査官による審査に合格しなくては取得する事ができません。
取得するまでの時間 審査の有無に大きく影響を受けるので、このように差が出ます。
  • 特許: 審査あり=時間がかかる。。。
  • 実用新案: 審査なし=早い! (出願してだいたい1年で登録されます)
有効期間
  • 特許: 長い (出願日から20年間)
  • 実用新案: 短い (出願日から10年間)

つまり、実用新案は、

  • 審査がないので、権利化されるのが早い!
  • 審査請求料が発生しないので、安い!

と言えます。

「早い!」「安い!」は、「うまい?」

特許と比べて、実用新案は「早い」「安い」のですが、その「うまみ」はどうでしょうか?

結論から言うと、

うまみは少ない。。。

と言えます。

前述の通り、「物」に関する発明であれば、実用新案でも権利化する事は可能です。
ただし、

  • 期間が短い (特許より10年短い)
  • 審査なしで権利化されているので、無効審判請求をされた場合に無効にされやすい (しかも、無効にされた場合、損害賠償責任が生じる可能性がある!)
  • 権利行使が制限される

ことがあり、早く・安く権利化したものの、ある意味で使いづらいと言えます。

個人的な見解ですが、これが実用新案の出願数は少ない理由だと考えています。

特許と実用新案は、よく似た制度です。
一概に、どちらが優れているとは言えません。

まとめ

今回は、

  • 発明した「物」を権利化する際、どのようにその権利を保護したいかにより、特許と実用新案の選択肢がある
  • 実用新案は特許と比べてハードルは低いが、その分リスクもある

という事を知って頂ければ幸いです。

次回は、「先願主義と先発明主義」についてご紹介できればと思います。

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おまけ

中国特許庁の発表によると、一昨年度(2017年度)の出願件数は、

  • 特許: 約138万件
  • 実用新案: 約168万件

だったようで、中国での実用新案の出願件数は「特許よりも多い」です!
日本の「特許の2%」より、はるかに多い割合です!

日本と同じように、特許と比べて権利期間が短いですが、

  • 権利行使が制限されない

ため、日本と比べると「権利が強い」と言えます。

また、中国では、政府が出願費用を補助する制度があるため「実用新案を出願しやすい環境」とも言えます。(但し、近年、実用新案は補助対象から除外されるようになっています。)


筆者プロフィール

沖縄出身。

進学を機に十代から沖縄を離れ、沖縄県外での時間の方が長くなりました。(海外、名古屋、東京)
夏になると帰省したい気持ちが強くなります。ここ数年実現出来てないので「今年こそ、夏は島へ帰る!」と意気込んでいます。

翻訳プロジェクトの新規開拓/提案/運用を担当しています。
特許事務所での経験を活かした翻訳サービスを日々思案中。