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中国と中国語のエキスパート

[第13回] 中国語の緑色をどう訳すか


中国の連休

みなさん、こんにちは。品質担当のSです。

先日、東京オフィスの社員と祝日の話になり、とても驚かれたことがあります。中国では、祝日などで長めの連休があると、代わりに土日に出勤するんですよ。つまり、土日の休みを平日に振り替えることによって、長めの連休を実現しているんです。

例えば、今年の春節は大晦日の2/4(月)から2/10(日)まで7連休でしたが、2/2(土)と2/3(日)の休みを振り替えることで実現しています。だから、2/3(日)まで働き、2/4(月)から連休に入ったわけです。

  • 2/4(月): 2/2(土)を振替え
  • 2/5(火): 祝日
  • 2/6(水): 祝日
  • 2/7(木): 祝日
  • 2/8(金): 2/3(日)を振替え
  • 2/9(土): 通常の土日
  • 2/10(日): 通常の土日

全国民共通の7つの祝日(計11日)が固定的に定められていて、振替え対象となる土日が毎年発表されますが、今年は当初の発表に加えて追加の発表(5月の4連休)もありました。

さて、本題に入りましょう。今回は「緑色」に関するお話をしたいと思います。

前回の続き

前回もお話しした通り、私が担当している仕事の1つに、「中国自然環境情報」という案件があります。毎月15日と30日が締め切りなので、あっという間に次の締め切りがやってくるという感じです。

この仕事をするにあたって、注意点はたくさんあるのですが、今回は中国語でよく使われる「緑色」という単語に注目してみました。

緑色発展

2011年2月に国連環境計画(UNEP)が「グリーン経済をめざして (Towards a Green Economy)」という報告書を発表しましたが、その僅か1ヶ月後に中国政府が発表した第十二次五カ年規画の第六編(原文および日本語訳)には「緑色発展 (Green Development)」という言葉が登場しており、資源節約型・環境友好型社会の構築を掲げました。これ以降、中国語の「緑色発展」は、環境ニュースに多用される言葉となりました。

中国が「緑色発展」を進める政策の説明をするため、2015年に清華大学国情研究センター所長である胡鞍鋼教授が日本の環境団体や議員向けに講演をしました。その際、私が通訳を務めたため、中国はグリーン・ニューディール(緑色新政)を推進している詳細について知ることができ、日本側の関係者全員が「緑色発展」とは中国特有の概念であることを理解し、「緑色発展」という言葉をそのまま使っていることがわかりました。

以来、この業界向けの通訳・翻訳では「緑色発展」をそのまま使うようにしています。ただし、「緑色」だけの時は、場合によって「グリーン」や「エコ」に訳す工夫も必要です。

実際の例

当時の講演では、次の本の内容が使われていました。

[本の表紙の写真]
本の表紙 (左が原書で右が訳書)

目次を見てもわかりますが、中国語の「緑色」は「グリーン」と訳されたり「緑色」と訳されたりしており、(そのルールはさておき)訳し分けられています。

[目次の写真 (訳書)]
目次の写真 (訳書)

実際のニュースだと、例えば次のようなものがあります。

原文(中国語) 訳文(日本語)
国务院办公厅部署开展“无废城市”建设试点工作
近日,国务院办公厅印发《“无废城市”建设试点工作方案》。
《方案》指出,“无废城市”是通过推动形成绿色发展方式和生活方式,持续推进固体废物源头减量和资源化利用,最大限度减少填埋量,将固体废物环境影响降至最低的城市发展模式,也是一种先进的城市管理理念。《方案》提出,在全国范围内选择10个左右有条件、有基础、规模适当的城市,在全市域范围内开展“无废城市”建设试点。
国務院弁公庁、「無廃棄都市」のモデル都市を展開
このほど、国務院弁公庁が『「無廃棄都市」のモデル構築方案』を公布した。
国務院弁公庁は『方案』において、「無廃棄都市」とは、グリーンな発展方式と生活様式の推進を通じて、固形廃棄物源の減量と資源化利用を推進することで、その埋め立て処分量を最大限減らし、固形廃棄物による環境負荷を最小限にするという都市の発展様式であり、先進的な都市管理理念でもあると述べている。また、全国から、条件を満たし、基盤があり、規模が適切な都市を10都市選び、その都市全域に「無廃棄都市」構想を展開していくと述べている。
过一个绿色环保的春节
中共中央办公厅、国务院办公厅于2018年12月印发了《关于做好2019年元旦春节期间有关工作的通知》,其中要求倡导理性、文明、健康的消费观和人情观,引导人们崇俭戒奢,摈弃陋习,做好城市燃放烟花爆竹管控工作,开展村庄清洁行动,过绿色环保春节
春节是我国最集中的消费季,有数据表明,我国一年中餐桌浪费的粮食价值惊人,被倒掉的食物相当于2亿多人1年的口粮。这种“舌尖上的浪费”在春节期间的餐桌上尤显突出,如此奢侈之风显然与绿色环保的理念背道而驰
エコで環境にやさしい春節を過ごそう
中国共産党中央弁公庁及び国務院弁公庁が2018年12月に「2019年元旦・春節期間の取組に関する通知」を発表した。その中で、理性的、文明的、健康的な消費観及び人情観を提唱し、人々に節約して贅沢を無くすことや古くて悪い習慣を無くしていくことを推奨し、また爆竹厳禁に対する管理、村における清潔行動の展開など、エコで環境に優しい春節を過ごそうと指導している。
春節は我が国において、消費が最も集中するシーズンである。中国の食卓における年間食糧ロスは、たいへんな驚きで、その廃棄される食べ物は、2億人の1年分の食糧に相当することがデータで明らかにされている。このような食べ物の無駄扱いは、特に春節の食卓に目立つ。このような贅沢な風潮は、エコや環境に優しいという理念にまったく背くものである。
探索“绿色金融”发展新路径 加快绿色银行建设步伐
自2012年,我国雾霾问题全面爆发,京津冀区域尤为严重。为积极践行绿色金融,充分借助国际金融组织资金用于污染防治,邮储银行北京分行为某客户向财政部开立保函4.49亿欧元,为亚洲开发银行向我国提供的专项主权贷款项下转贷款提供担保。客户获得亚行专项贷款后,发起设立“区域减排及污染防治基金”,带动总投资约20亿美元的节能环保项目,促进京津冀及周边地区大气污染防治。
緑色金融」の新たな手法をトライして、緑色銀行の建設を速める
2012年に中国のスモッグ問題が勃発し、北京天津河北地域は、とりわけ深刻であった。緑色金融を積極的に利用して、国際金融機関からの融資を受け、それを汚染対策に当てる試みとして、郵貯銀行北京支社は、ある取引先がアジア開発銀行から約4.49億ユーロの特別融資を受けられるよう、財政部に対してにその保証状を申請した。申請が通って、取引先はアジア開発銀行のローンを受けて、「地域の排出削減及び汚染対策基金」を設立し、総投資額約20億ドルの省エネ環境保護事業を起動させ、首都圏(北京・天津・河北及び周辺地域)における大気汚染対策を推進した。

このように、「緑色」という言葉が使われている箇所の意味を正しく把握して、適切な訳語を選ぶ必要があります。「緑色」に限らず、このように訳し分けが必要な言葉は他にもありますが、この辺りは翻訳者や校閲者の腕の見せ所でもあります。


筆者プロフィール

北京出身。

大学進学を機に来日し、大学卒業後は日本で某大手商社に入社。学生時代も含め、通算16年あまり日本で暮らす。

現在、モシトランス北京では品質担当の責任者として、モシトランス東京では創業メンバーとして、北京と東京を行き来する忙しい日々を送っている。