中国語の翻訳ならモシトランス

株式会社モシトランス
中国と中国語のエキスパート

[第9回] 北京で見たキャッシュレス社会からあれこれと


10連休!

みなさん、こんにちは。技術担当のTです。

ついに、明日からGWですね。私は10連休ですけど、未だにほとんど予定が決まっていません。どこかにトレッキングしに行って、木漏れ日や川のせせらぎを全身で感じたいなぁなんて思ってますけど、実現するのかな。

さて、第9回も、前回に続いて、先日の北京出張の際のお話ですが、今回は翻訳から離れて技術系のお話をいたします。

どこもかしこもQRコード

2年前に北京を訪れた時と最も違ったのは、あの店もこの店も、とにかく、どのお店に行ってもQRコードが目についたことです。そう、日本ではようやく話題になり始めた、QRコードによるスマホ決済です。

日本だとPayPayLINE Pay楽天ペイなどが入り乱れ、群雄割拠の様相を呈していますが、中国だとAlipayWeChat Payの2強が市場を制覇しています。

大抵のお店は、レジのそばにAlipayWeChat PayのQRコードを目立つように掲示していました。大きなお店に導入されていても驚きもしませんが、個人で経営しているような小さなお店でもQRコード決済に対応していたのには、本当にキャッシュレス社会が浸透しているんだなと実感しました。

[量り売りのお店の写真]
量り売りのお店でもQRコード決済に対応 (水色がAlipay用、緑色がWeChat Pay用のQRコード)

実際、2019年4月8日付の朝日新聞の記事によれば、日本でのキャッシュレス決済比率は19.8%(2016年)なのに対し、中国でのそれは60.0%(2015年)と、大きく水をあけられています。

死角はないのか?

キャッシュレス社会に関しては、日本の一歩も二歩も先を行く中国ですが、それは中国人にとっての話であり、(中国から見た)外国人にとっては、なかなかハードルが高いということが、今回の出張でよくわかりました。

私はWeChatのアカウントを持っているので、WeChat Payが使えないかと事前に調べてみたものの、結局、中国の銀行口座を持っていないと、WeChat Payにチャージできないようでした。誰が決めているのかわかりませんが、外国人はアカウントの登録が制限されたり、チャージが制限されたり、チャージできてても支払いが制限されたり、その時々で出来ることがころころ変わるので、安定して使える状態にはありません。

帰国後、数年前まで主流だった銀聯カードについても調べてみました。日本でも銀聯カードを新規に発行してもらうことはできる(例えば三井住友銀聯カード)のですが、中国以外の国では銀聯カードが使えるお店は少ないので、中国に何度も訪れる人じゃないと、わざわざ銀聯カードを持とうとは思わないですよね。

加えて、私が見た限りでは北京の店頭で銀聯カードのロゴを見かけることはあまりなく、QRコード一色という印象だったので、銀聯カードだけで支払いを済ませるというのは、あまり現実的ではなさそうでした。

また、キャッシュレスが主流になって現金お断りのお店が増えると、高齢者を中心に社会から締め出される人たちが出てしまい、いずれ日本でも中国でも問題になるだろうと思います。少なくとも、日本ではまだまだ現金が主流なので、遠い先の話でしょうが、中国だとあと何年もしないうちにそんな世の中になるかもしれませんね。

個人的にはキャッシュレス派なので、日本で使っている決済方法が、中国でも安全に使えるようになれば理想的ですが、そんな日が来るんでしょうかね。中国のAlipayユーザーは日本のPayPay加盟店で使えるんだから、その逆が実現すると、中国を訪れる日本人にとっては、かなり便利になるんですけどねぇ。

本当に日本は遅れているのか?

よく「日本はキャッシュレス化が遅れている」という論調の記事や番組を見かけますが、私はそうは思っていません。確かに、先ほどご紹介した朝日新聞の記事の通り、キャッシュレス決済比率だけを見ると、日本は遅れていると言わざるを得ません。

しかし、キャッシュレス決済の環境は、日本は何年も前から整っていました。環境面では、今でも世界の最先端を進んでいると思います。欧米諸国や日本では20世紀からクレジットカードが普及しており、既に1987年の段階で日本におけるクレジットカードの発行枚数は1億枚を突破していました。加えて、1990年代には、CAFISに代表されるようなクレジットカード決済時のオンラインでの与信審査も普及していました。

また、2000年代に入ると、SuicaPASMOに代表されるICカードが次々とサービス開始となり、ICカードをかざすだけで短時間で安全に支払いができるようになりました。その後、クレジットカードもスーパーやコンビニを中心に、少額決済の場合はサインレスで支払えるようになり、支払い時間が大幅に短縮されました。

このように、20年以上前から日本ではキャッシュレス社会の下地はできていました。特にICカードでの支払いに関しては、世界最先端だと自慢していいくらいだと思います。(QRコード決済のためのスマホアプリを起動している間に、モバイルSuicaをかざせば支払いは終わりますから。)

一方、クレジットカードが普及していない中国では、スマホが普及した後にタイミングよくQRコードでのスマホ決済が一気に普及したわけです。スマホという高機能で汎用的なデバイスを前提に、加盟店側はQRコードだけ店頭に掲示しておけばキャッシュレス決済に対応できるわけですから、そりゃ普及しやすいですよね。(中国での加盟店が支払う手数料は不明ですけれど。)

キャッシュレス決済比率に関しては、日本は中国や韓国より見劣りしていますが、1-2年もすればQRコードでのスマホ決済も日常的な光景になるでしょうし、そんなに悲観することはないのではと勝手に楽観視しています。

おまけ

北京の空は霞んでるイメージが強かったのですが、私たちが訪れた4月上旬の北京の空は、実にきれいでした。この季節は風が強く、大気中に浮遊している粒子が吹き飛ばされて、きれいな空になるんだそうです。

そして、東京と違って北京の道路はゆったりとしていて、道路を挟んだ建物同士の距離が長いため、空が広々としていました。それが、東京とは違う、北京独特の雰囲気を醸し出しているんですかね。

[北京の空の写真]
雲一つない北京の広い青空

筆者プロフィール

広島出身。

大学進学を機に上京し、それ以来、ずっと東京在住のため、既に人生の半分以上が東京都民になってしまったが、広島の心は忘れていない(つもり)。

新卒で米国系IT企業の日本法人に入社した後、外資系企業を中心に何度か転職をし、現在に至る。

モシトランス東京では技術担当として、社内のIT化や体制づくりに奮闘中。

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。