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[第19回] 会議通訳と通訳ガイドはどう違うの?


早速、本題に

みなさん、こんにちは。品質担当のSです。

第15回で軽く予告した通り、今回は私が会議通訳として参加するプロジェクトに同行することが多い、通訳ガイドについて少し触れたいと思います。

通訳だっていろいろ

一口に通訳と言っても、利用場面によって、いろんな種類があります。

  • 通訳ガイド
  • 放送通訳
  • ビジネス通訳
  • 会議通訳
  • コミュニティ通訳
  • イベント会場通訳 などなど

そして、それぞれ必要とされる知識やスキルも違います。しかし、残念ながら、通訳を利用する側の担当者はご存知ないことが多いです。

日本の通訳養成学校の中で一番有名なサイマル・アカデミーにおける、会議通訳と通訳ガイドの定義を引用してみました。
(引用元: https://www.simulacademy.com/column/howto/interpreter-type)

会議通訳 通訳ガイド
国際会議やシンポジウム、サミット、政府間協議などの場で通訳を行うことをいいます。政治家や専門家が話す内容を訳す場面が多く、ビジネス通訳より高度な専門知識や語学力が求められます。また、複数国が参加する会議になるとスピーカーの発言を聞きながら訳す「同時通訳」や、訳した言語からさらに他言語へ訳す「リレー通訳」をする場合もあります。
サミットなどの重要な国際会議は大勢の聴衆に向けて通訳を行うため、会議通訳はトップクラスの通訳者が行います。
通訳ガイドは、外国人観光客に向けて日本の案内を行います。誰かの話している言葉を訳すというよりは、観光地で日本の文化や社会、観光名所などを外国語で案内するのが基本的な仕事内容となります。通訳ガイドの仕事をするためには、国家資格である「通訳案内士」の取得と、各都道府県へ通訳ガイドとしての登録が必須です。
通訳ガイドは語学力や説明力に加え、お客様への気遣いができるコミュニケーション能力が求められます。また、外国人から様々な質問を受ける機会も多いので、それらに対応できるよう日本に関する多彩な知識が必要です。

定義を見て気づいた方もいると思いますが、会議通訳者になるために必要とされる資格は、特にありません。実は、「語学力」「通訳スキル」「専門知識」の3つを持っていれば、腕試しは可能です!

一方、通訳ガイドは国家資格が必要です。これは中国でも同じですが、観光地の文化や社会、幅広い知識が要求されます。

通訳ガイドさんとのお仕事

私はこれまで何度か通訳ガイドの方と一緒に仕事をしてきました、中でも2015年5月に、自民党の二階総務会長(当時)が率いる3,000人訪中団の時の事をよく覚えています。
3,000名の訪中団を中国の外交部、国家旅游局(日本の観光庁に相当)、そして、在中国日本大使館が対応していましたが、対する日本側の事務局は観光庁の方々でした。
また、ツアー手配は国家旅游局傘下の大手旅行会社3社が行ないましたが、トップは中国国際旅行社(CITS)で、800名に対応していました。その旅行会社の日本部からの依頼を受け、私を含め弊社から4名の会議通訳を派遣していました。

会議通訳が付くのは事務局として来られた観光庁の方々で、毎日ホテルニューオータニの一室を借りて、様々な段取り調整を行ないました。中でも中国旅游局との交渉が一番多く、1日に2-3回は出向いていた記憶があります。私たちが旅游局に出かけるたびに、旅行会社が手配した車に乗り、運転手もガイドさんも付いていました。運転手への指示、局担当者との事前連絡、そして、我々を無事に会議室まで案内して外で帰りを待つというのがガイドさんの仕事で、会議室に入ったら、会議本番通訳は私の担当でした。
5月23日夜に人民大会堂で開催された中日友好晩餐会は、一番メインのイベントでした。その前日は観光庁の方と共に、人数交渉や段取り交渉などが行なわれましたが、様々な事情もあって交渉は難航し、夜遅くまで行なわれていました。それだけに、無事に交渉が終わった時に、観光庁の方、ガイドさん、運転手さん、そして私自身も含め、全員がホッとした顔になったことを今でも鮮明に覚えています。
本当に全員の努力で目的を達成し、感無量でしたね。

その後、中国国際旅行社(CITS)のガイドさんから話を聞いて、3,000名の日本の方々は、決まった日程で動いていたわけではなかったと知りました。全員のスケジュールがばらばらで、日本の地方観光団体は中国の同業者と商談したり、現地で観光しながら新人研修を行なったり、北京だけ滞在するグループもいれば、東北の都市や河北省まで行くグループもいました。
1社だけで800名もの大人数に対応する必要があるため、その手配力が本当に試されます。

これだけの大勢の方々を迎えるために、故宮は普段なら8時半のオープンを特別に7時にオープンしていたし、人民大会堂のメインイベントの日は、入場だけでもセキュリティチェックを含めて1時間半もかかり、彼らを乗せる車を停めるために天安門広場は15時半まで入場規制していました。
クライマックスは、18時半の晩餐会直前、習近平国家主席が来られるアナウンスが流れ、全員総立ちで、拍手を送り、中に涙が流す人もいたとか。
習主席は9分30秒のスピーチを行ない、中日両国の民間交流の大事さ、とりわけ若者交流の大事さを話されました。
このスピーチを聞いて、訪中団の皆も、傍に付き添う通訳やガイドも、自分たちこそが「民間大使」である責任感を胸に、疲れはふっ飛んでました。

実は、この時に一緒に仕事をしていた旅行会社のガイドさんの中にご夫婦がいっらしゃって、今でも仲のいい友人です。
奥さんの方は、私と親しくしている日本人家族が北京に来られた際に本領を発揮して、故宮の部屋は何個あるの、故宮の石畳みは何個あるのとか、7才の子供が聞く様々な質問に答えられ、私をびっくりさせていました。
旦那さんの方は、会社ナンバーワンのガイドさんとして知る人ぞ知る有名人で、知識が豊富で、気配りが尋常でないくらい良くて、それでいてとても腰の柔らかい方でした。
プロの方々と一緒に仕事をするのが、実に気持ちがいいものですね。

[友人になったガイドさん夫婦の写真]
友人になったガイドさん夫婦

筆者プロフィール

北京出身。

大学進学を機に来日し、大学卒業後は日本で某大手商社に入社。学生時代も含め、通算16年あまり日本で暮らす。

現在、モシトランス北京では品質担当の責任者として、モシトランス東京では創業メンバーとして、北京と東京を行き来する忙しい日々を送っている。