中国語の翻訳ならモシトランス

株式会社モシトランス
中国と中国語のエキスパート

[第36回] 中国製ラジコン玩具一考 (後編)


今回のお題

みなさん、こんにちは。ビジネス支援担当のNです。

前回は本題に入る前に、中国の経済と貿易について少々詳しくお話したが、今回はようやく、本題の中国製ラジコン玩具の話をしたいと思う。

ラジコンの歴史を振り返る

中国製玩具の中で性能がよく、且つ価格が比較的に安くて魅力的なのはラジコン(RC:ラジオコントロールの略)の自動車・戦車・飛行機・ドローン等である。筆者はラジコンの飛行機と戦車を趣味としているので、日本のラジコンメーカーまたは中国メーカーの製品を通販で購入して楽しんでいる。

筆者が小学生の頃に憧れた空を飛ぶ模型飛行機は、エンジンをつけたUコンの飛行機だった。Uコンは価格が高くて、とても小学生には手の届かない玩具であった。40年程前日本でモーレツに流行ったUコンはアメリカから伝わったエンジン付きの模型飛行機。2本のワイヤーを使い操縦機能を上昇/下降だけに固定させた模型飛行をワイヤー2本で上下させて離陸/空中回転/着陸させる。従いワイヤーの長さの範囲で飛ばすエンジン模型飛行機である。

その後、電子技術の発達により、模型飛行機内部に受信機とサーボモーターを取り付けた飛行機本体と、これを無線送信機(プロポ)で操縦するラジコン飛行機の時代が到来している。

ラジコン飛行機の動力は2種類あり、エンジンをつけたもの(エンジン機)とモーターをつけたもの(電動機)がある。エンジン機は燃料(ニトロメタン・ひまし油・エタノール等の混合)が必要で、排気と騒音が酷いこと、かなりの飛行スペースがないと飛ばせないという問題があり、狭くて人口が密集している東京を含めた日本の都市部では飛ばす所が殆どない。またエンジンを小型化するには限度があり、重量のあるエンジンをつけて飛行機を飛ばすには機体も大きくする必要がある。従いエンジン機はどうしてもお値段が高くなる。

エンジン機はどうしても騒音やエンジンの煙の問題が解決できない。そこに登場したのが電動機である。

電動機の普及

電動機が普及した理由は以下である。

  1. 電子技術の発展により飛行機に搭載する受信機が小型/軽量化できるようになった。
  2. 小型で高出力のブラシレスモーターが出現しRC機に利用されるようになった。
  3. リポ電池(リチウムイオンポリマー二次電池、電解質に重合体「ポリマー」を使用した電池)の出現により小型で高容量のバッテリーがRC機に使用できるようになった。
  4. 機体をEPO(発泡ポリスチレン)やEPP(発泡ポリプロピレン)等で製造することが可能となり、機体自体の重量が軽くなり、モーターでも飛行が可能となった。
  5. 以上の4つの条件から、小型/軽量で高性能の電動機が安価で供給できるようになった。

以上から筆者も所有している中国の有名なラジコン飛行機製造メーカーであるFMS(本社:広東省東莞市)の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)は翼長750mm、胴体全長570mmの大きさだが重量は僅か460gである。3-4時間のリポバッテリーの充電で6分程度の飛行が可能である。

また最近のラジコン飛行機やドローンのモーターは、殆どがブラスレスモーターである。ブラシレスモーターを回転させるためにESCという電子コントローラーでモーターに流れる電流を制御してモーターを高回転/高出力で回転させることが可能となり、高速の飛行を可能にしている。

都内には飛ばせる場所がない

一方、ラジコン飛行機やドローンを飛ばす際は、国土交通省の法規や東京都なら東京都の条例があり、東京23区内で飛ばせる場所は、私営のドローン練習場を除き殆ど飛ばせる場所がない。

  • 小型無人飛行機(飛行機+ドローン)の飛行禁止の法律と規制:
    • 小型無人機等飛行禁止法
    • 電波法
    • 公園条例
    • 土地所有権との関係
    • プライバシー権・肖像権との関係
    • 文化財保護法
    • 海上・港周辺の規制
    • 河川区域の規制
    • 道路交通法

(* 詳細については、こちらを参照。)

2015年に首相官邸の屋上にドローンが発見されたことから、東京都はそれを受けて、2015年4月28日よりドローンを含めた小型無人機の使用を禁止。公園条例で全部で81個ある都立公園・庭園は小型無人飛行機の飛行を全面的に禁止している。

ドローン(小型無人航空機)が問題になって、2015年12月に改正航空法が施行され、国土交通省の承認許可なしに飛行できる最高高度は150mに制限された。航空機の航行の安全に影響を及ぼす恐れのある空域というのが理由であり、許可なしに150m以上の飛行は規制されているのが現状。

国土地理院が発表している人工密集地域では小型無人飛行機は飛ばすことは違法行為となり、処罰の対象となる。下図で赤く塗られている部分が人口密集地域である。また羽田空港と成田空港周辺も航空機の飛行の障害となることから小型無人飛行機は飛ばすことが出来ない。東京居住者にとって小型飛行機を飛ばせる場所が中々ないのが一番頭の痛い問題である。

[国土地理院が発表している人工密集地域]
国土地理院が発表している人工密集地域

世界で一番安いRC(ラジコン)通販はどこか?

日本のラジコン店、ネット通販店では90%以上が中国製の製品と思われる。

例えば日本で有名なラジコンメーカーである京商やハイテックマルチプレックスジャパン等が日本でRC飛行機/ドローン/自動車(以下RC玩具)を販売しているが、実は多くの製品は中国のRC玩具メーカーに発注、中国メーカーから仕入れて、自社のマークを付けて売っている例も増えてきている。理由は簡単で、やはり中国の安い人件費・原料費・製造キャパを利用して価格競争力のある玩具を輸入販売している次第である。中国でラジコン関係の工場や事務所が密集しているところといえば広州、深圳、香港である。

ドローンの出現

ドローン(英:drone)とは元々ハチの(ブーンという低い)羽音、はばたき、ハミングという意味である。ドローンが飛んでいると4つのプロペラの回転音が羽音に聞こえるのでドローンを呼ぶようになったようである。

ドローンの市場規模は世界で11億ドル(およそ1,100億円)と言われ、既に巨大と言える市場規模である。商用(業務用)ドローン市場規模は2017年に約6億円と言われている。さらに年率30%の上昇を続け、2020年までに60億ドル(およそ6,000億円)に達すると言われている。元々ドローンは軍事用、現在は商業用・コンシューマー(個人が買って遊ぶ)用と用途が移っている。

最近TVの報道番組/ドキュメンタリー番組/バラエティー番組/旅行番組などで空から地上を映した映像がよく放映されている。一昔前なら取材用のセスナなどの小型飛行機やヘリコプターで撮影が必要だったが、今はコストも安く手軽に空撮が出来るドローンが主体となっている。ドローンのシェア率が70%を超えるDJI(詳細後述)の中のPhantomシリーズに限定すれば、500mの高度まで飛行可能といわれている。日本の建物の高さと比べると、六本木ヒルズ238m/東京タワー333m/スカイツリー634mなので、スカイツリーの展望台(450m前後)から眺めた位の画像が撮れることになる。

ドローン主要メーカーのトップを走るのが中国は深圳のDJI、2014年に売上5億ドル、2016年には15億ドルと公表。2014年のドローン世界市場は11億ドルと言われており、DJIは約半分の圧倒的なシェアを1社で握っていることになる。他の主要ドローンメーカーはフランスのParrot(パロット)やアメリカの3D Robotics(スリーディロボティクス)が挙げられる。DJIを含めたこの3社が現在世界のトップ。またその他400社以上がドローンメーカーが存在している。中国とアメリカに現在はドローンメーカーが集中しているようである。DJIはカメラメーカーのハッセルブラッド社を買収しその技術をドローンに利用するなど、ここ最近は小型の空撮用機体メーカーへの転身を図っている。ドローンメーカーはより小型、軽量、持ち運びに便利な機種、そして低価格化といった方向に向かいそうだ。


筆者プロフィール

横浜出身。

大学卒業後、某大手商社に入社。新人時代を除き、一貫して中国ビジネスに携わる。北京、上海、大連への赴任経験もあり、中国在住期間は通算で16年になる。

その経験を活かし、モシトランス東京ではビジネス支援を担当する傍ら、某大学の中国語学科では非常勤講師として中国の経済と社会について講義を行なっている。