今回のお題
みなさん、こんにちは。ビジネス支援担当のNです。
今、中国製ラジコン玩具が業界の主流となっている。今回と次回の2回に分け、このことについて少し考えてみることにする。
今回は本題に入る前に、前編として中国の貿易や経済の発展について、振り返ってみたい。
世界貿易の中での中国
まず世界貿易の中の中国の立ち位置を見てみよう。なんと中国は世界貿易でトップを走っている。
表と見ると直ぐに分かるが、中国は世界貿易の中で輸出と輸出入総額で第1位、輸入でも米国に次ぐ世界第2位の貿易大国である。因みに日本は輸出入、輸出、輸入の何れも世界第4位である。
(資料: GLOBAL NOTE / 出典元: UNCTAD)
順位 | 国名 | 金額 (百万USD) | 比率 (%) |
---|---|---|---|
1 | ![]() |
4,622,950 | 11.8 |
2 | ![]() |
4,278,412 | 10.9 |
3 | ![]() |
2,846,460 | 7.2 |
4 | ![]() |
1,487,138 | 3.8 |
5 | ![]() |
1,368,697 | 3.5 |
順位 | 国名 | 金額 (百万USD) | 比率 (%) |
---|---|---|---|
1 | ![]() |
2,487,045 | 12.8 |
2 | ![]() |
1,664,085 | 8.5 |
3 | ![]() |
1,560,816 | 8.0 |
4 | ![]() |
738,403 | 3.8 |
5 | ![]() |
722,668 | 3.7 |
順位 | 国名 | 金額 (百万USD) | 比率 (%) |
---|---|---|---|
1 | ![]() |
2,614,327 | 13.2 |
2 | ![]() |
2,135,905 | 10.8 |
3 | ![]() |
1,285,644 | 6.5 |
4 | ![]() |
748,735 | 3.8 |
5 | ![]() |
673,549 | 3.4 |
中国の貿易が大きくなった理由
では、何故中国の貿易がこのように大きくなったのか?
答えは簡単である。鄧小平が総設計師として導入を進めた改革開放政策のお陰である。中国の経済発展は以下の表を見れば一目瞭然である。
(出典元: 2010年までは中国統計年鑑、2015年以降はJETRO)
1978年 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2015年 | 2018年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
GDP総額 (億ドル) | 2,165 | 3,913 | 11,838 | 59,312 | 112,210 | 134,070 |
1人当たりのGDP (ドル) | 226 | 342 | 934 | 4,427 | 8,154 | 9,608 |
貿易総額 (億ドル) | 206 | 1,154 | 4,743 | 29,728 | 39,586 | 46,229 |
輸出額 (億ドル) | 97 | 621 | 2,492 | 15,779 | 22,765 | 24,870 |
輸入額 (億ドル) | 109 | 534 | 2,251 | 13,948 | 16,820 | 21,359 |
直接投資受入額 (億ドル) | - * | 35 | 407 | 1,057 | 2,498 | 2,304 |
外貨準備高 (億ドル) | 2 | 111 | 1,656 | 28,473 | 34,061 | 31,679 |
(* 統計がないが、ほとんどゼロだと見込まれる。)
鄧小平は1976年に三度目の失脚後、1977年に復権、その後実権を握り、改革・開放へ中国の舵取りを大きく切り替えた。中国が改革開放政策を開始したのは、1978年12月18日開催の中国共産党第11期中央委員会第三回全体会議(所謂、「中共第11期三中全会」)において国の方針をそれまで毛沢東が推し進めきた「階級闘争」に終止符を打ち、「経済建設」へと大転換することを決定。改革開放政策の導入によってその実現を図ろうとした。
つまり表向きは社会主義を堅持した上で、部分的には資本主義的な要素を取り入れた経済を活性化し、遅れた技術と不足する資金は海外に求めるという「いいとこ取り」を進めようとした。これが現在まで中国が一貫して進めてきた「改革・開放路線」のスタートである。
「白猫黒猫論」
「資本主義的な手法か、社会主義的な手法かではなく、生産力の発展こそが第一」
「可能な者から先に裕福になれ。そして落伍した者を助けよ」
を唱えた鄧小平らしい政策といえる。
経済発展の度合い
ではどの位の経済発展を成し遂げたのか、改革開放路線が始まった1978年と2018年の比較をしてみよう。
まず、その中身はどうなっているのか? 下図を見て欲しい。両者の倍率を算出してみるとミラクルともいえるような経済発展を遂げている。
比較対象 | 倍率 (=2018年/1978年) |
---|---|
GDP | 62倍 |
1人当たりのGDP | 43倍 |
貿易総額 | 224倍 |
外貨準備高 * | 15,840倍 |
(* 外貨準備高は、2006年以降、日本を追い抜き世界第1位。)
GDP (Gross Domestic Product: 国内総生産)とは、簡単に言えば、その国の国民が1年間に稼いだお金の総額のことである。GDPが62倍に増えたことにより、中国国内の企業や個人も大変潤うようになった。改革開放路線が成功したのは、中国国民の努力の賜物と言ってよいだろう。
経済発展の陰の立役者
中国商務部のWebサイトによれば2017年12月現在で、外国投資企業数は約90万社、実際使用外資累計額は1.9兆米ドルとなった由。日本貿易振興機構(JETRO)の調査によれば中国に設立された日系企業総数(拠点数)は32,349社(2017年10月1日現在)である。
注目すべきは、これら中国に設立された外国投資企業の中国全体の貿易に占める割合である。下図のようになんと中国全体の輸出の44.1%、同輸入の49.4%は外国投資企業が占めている。つまり、中国経済を発展を牽引したのは正しく外国投資企業であることが分かる。
(出典元: 通商白書2016 第Ⅰ-1-1-3-7図 中国の輸出入に占める外資系企業の比率)
中国製品のシェア
次に世界の輸入に占める中国製品のシェアについて分析してみる。
下図は世界の輸入に占める中国製品の割合である。右肩上がりで上昇しているが、2010年以降は若干の減少はあるものの、世界の輸入の約14%が中国製品であることが分かる。
(出典元: みずほ総合研究所 みずほインサイト 中国の輸出競争力は低下したのか 2014年11月18日)
![[グラフ]](https://www.moshitrans.co.jp/blog/.assets/thumbnail/blog_31_01-320wri.png)
下図からは、頭打ち傾向にはあるものの中国製の玩具・雑貨の世界の輸入に占める割合が30%強を占めることが分かる。
(出典元: みずほ総合研究所 みずほインサイト 中国の輸出競争力は低下したのか 2014年11月18日)
![[グラフ]](https://www.moshitrans.co.jp/blog/.assets/thumbnail/blog_31_02-320wri.png)
さらに、先進国(EU・日本・米国)の労働集約財輸入の内、また各国・地域からの玩具・雑貨の輸入の割合を見ると中国製品が半分近くを占めてる。このことから中国製品が世界中で溢れかえっていることが分かる。
(出典元: みずほ総合研究所 みずほインサイト 中国の輸出競争力は低下したのか 2014年11月18日)
![[グラフ]](https://www.moshitrans.co.jp/blog/.assets/thumbnail/blog_31_03-640wri.png)
以上、長々と中国の経済と貿易についてお話したが、次回は後編として、本題の中国製ラジコン玩具の話をしたいと思う。
筆者プロフィール
横浜出身。
大学卒業後、某大手商社に入社。新人時代を除き、一貫して中国ビジネスに携わる。北京、上海、大連への赴任経験もあり、中国在住期間は通算で16年になる。
その経験を活かし、モシトランス東京ではビジネス支援を担当する傍ら、某大学の中国語学科では非常勤講師として中国の経済と社会について講義を行なっている。