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[第20回] 中国ビジネスの難しさ


今回のお話は

みなさん、こんにちは。ビジネス支援担当のNです。

さて、今回は中国ビジネスの難しさについて、実際にあった事例を基に書き連ねてみたいと思います。前回同様、ここから先は敬体(=ですます調)ではなく、書き慣れた常体(=である調)にしますが、何卒ご容赦を。

中国からの要望

昨年末、北京の病院の栄養士の研修のため、日本の栄養士を派遣して指導教育して欲しいという要望があった。それも、普通の病院ではなく、「三甲」と呼ばれる中国では最高等級の病院である。

日本人だと三甲と言われてもピンとくる人は少ないだろうが、中国の病院は以下のように等級が分かれている。

三級医院 国や省、市、または、大学が管轄する大病院
二級医院 県や区が管轄する病院、または、専門病院
一級医院 村、社区衛生所、地域医療を担当する病院

それぞれの級はさらに甲乙丙に分かれており、三甲とは、すなわち三級甲等医院のことで、規模、人員、技術、設備の全ての面において、最高ランクに位置付けられた病院である。

また、病院における病院食や栄養指導の仕組みは、当然ながら日本と異なるのだが、ここでは割愛する。なお、興味のある方は、こちらをご参照いただきたい。

さて、中国からの要望を受け、日本の栄養士の協会である日本栄養士会にメールと電話で相談した結果、同会の仕事の範囲にこのような業務は含まれていないので、対応できないとの返事だった。

栄養士と管理栄養士

実は、日本の栄養士には栄養士と管理栄養士の2つの資格がある。

栄養士 食生活のアドバイザーを証明する国家資格。
栄養士とは、都道府県の知事が認定する国家資格。厚生労働大臣指定の栄養士養成施設を卒業すると、資格が与えられる。食生活のアドバイザーとして信頼の高さを証明している。学校、病院、福祉施設、保育園、給食会社など、それぞれの施設に応じた給食や食事の計画・調理・提供を担当。また、人々が健康的な食生活を過ごせるよう、食や健康に関する正しい知識や技能を伝える仕事をしている。
管理栄養士 栄養のプロを証明する国家資格。
管理栄養士とは、厚生労働省大臣が認定する国家資格。国家資格に合格しないと資格をもらえない。それだけの知識や技能を備えた栄養のプロであることを証明している。病気の人などに専門的な栄養指導を行う。高度な専門知識と技能を用いて、主に3つの栄養指導にあたる。
1. 病気や怪我をした人に対する療養のための栄養指導。
2. 個人の状態に応じた健康保持・増進のための栄養指導。(特定保健指導など)
3. 施設などで特定多数の人に対する給食管理・栄養指導。

本件の結末

伝手をたどって栄養士1名と管理栄養士1名をやっと探し出し、北京の病院側に紹介。当初は直ぐにでも来て欲しいとの話だった。日本側の都合で数か月先に訪中することで話がまとまりかけていた。訪中予定日が迫ってきたので、北京の病院側に早急に受け入れの具体的な事項を取り決めたいと打診した所、上司に確認するので待って欲しいと1か月近く待たされた。待たされた結果、中国側の都合で本件取り止めるとの回答で具体的な理由説明はなかった。

本件は北京の病院側と当社の間に中国の紹介者がおり、この紹介者を経由して先方と連絡を取っていた。紹介者は当社が直接北京の病院側とコンタクトするのを嫌がったため、当社は紹介者のフィルターを通してしか相手と話が出来なかった。このため当社が相手に聞きたい情報、相手が当社に聞きたい情報を直接に入手出来なかったことが裏目に出て、相手の状況や考え方や感触が取れなかったことが本件実行に至らなかった主な理由だと思われる。

日本と中国は距離的には非常に近いが、両国の国民性の違い、思考回路の違い、仕事の進め方の違いが非常に大きいことを改めて気づかされた。また直接相手を話をすることの重要性を再認識した次第である。紹介者にはきちんと紹介料を支払うことを事前に約束して納得させ、紹介者立ち合いのもとに相手と面談して、直接コミュニュケーションを取ることが、今回のような失敗を回避する最善策となることを実感した。今回の案件は難航したが、今後、日本の栄養士が活躍されることが大いに期待できる。


筆者プロフィール

横浜出身。

大学卒業後、某大手商社に入社。新人時代を除き、一貫して中国ビジネスに携わる。北京、上海、大連への赴任経験もあり、中国在住期間は通算で16年になる。

その経験を活かし、モシトランス東京ではビジネス支援を担当する傍ら、某大学の中国語学科では非常勤講師として中国の経済と社会について講義を行なっている。