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[第61回] テープ起こし

今回のお題

翻訳プロジェクト担当のUです。

今回は、テープ起こしについてご紹介いたします。

「テープ起こし」という言葉をあまり聞きなれない方も多いと思います。
(そもそも「テープ」(カセットテーブ、ビデオテープ)という言葉は死語かもしれませんね)

「テープ起こし」とは、収録されている音声(喋っている内容)を文字に書き起こす作業です。
他にも、「文字起こし」「反訳(はんやく)」等という言い方もされます。

対象となる音源は、会議や裁判等といった秘密性の高い内容から、テレビ番組といったライトな内容まで幅広いです。

1分間で話す文字数

一般的には、人が1分間に話す文字数は300350文字と言われています。
但し、これは、聞いている人が理解しやすい文字数なので、早口な方はより多い文字数となります。

テープ起こしの対象が会議等の場合、同席者間で理解し合っている事が前提となるので、早口な方が多いです。
また、最近はYouTubeの内容を書き起こすというご依頼を頂く事もありますが、YouTuberの方々にはかなり早口な方もいるので、1分間で話す文字数はかなり多いと思われます。

文字に書き起こす時間

話し手の喋るスピード、音源の雑音状況等により左右されますが、一般的には1時間分の音声データを文字に起こすのに36時間かかると言われています。
つまり、10分間の音声データを書き起こすのに、多く見積もって1時間かかるという事になります。

実際に作業をしてみると「あれ、まだ1分間分しか書き起こしていないんだ。。。」という事が多々あります。

書き起こしのスタイル

一概に、
 収録されている音声を文字に書き起こす
といっても、いくつかのスタイルがあります。

どのスタイルで書き起こすかは、
 1)音源の内容
 2)起こした文字の使用用途 
により異なると言えるでしょう。

スタイルその1:素起こし(すおこし)

音源の内容を
 聞こえた音をそのまま一字一句正確に書き起こす
スタイルです。
喋っている際の「あのー」「えー」「まあー」等の特に意味を持たない発声、相槌、言い間違い、同じ単語の繰り返し等も全て書き起こすスタイルです。

例:
まあそういう具合にしてね、もう無茶苦茶な難問を、難題を、まあかい、解決しなくてはならなくって。

不要な文字や言い間違いがあり、文章構成の観点からは不自然に感じるかもかもしれませんが、文面からも臨場感が伝わると思います。

「素起こし」は、正確な記録や高い証拠性を必要とされる場合に要求されるスタイルと言えるでしょう。
具体的には、カウンセリング、研究、裁判等を書き起こす際によく用いられるスタイルです。

スタイルその2:ケバ取り

音源の内容を
 文脈上意味を持たない不要な言葉を削って書き起こす
スタイルです。
「素起こし」とは打って変わって、喋っている際の「あのー」「えー」「まあー」等の特に意味を持たない発声、相槌、言い間違い、同じ単語の繰り返し等を削って書き起こすスタイルです。

例:
そういう具合にして、無茶苦茶な難題を解決しなくてはならなくって。

「ケバ取り」は、不要な言葉が削られているので、文章がスッキリとして読みやすいスタイルと言えるでしょう。
具体的には、インタビュー、講演会、会議等を書き起こす際によく用いられるスタイルです。

スタイルその3:整文(せいぶん)

読んで字のごとく「文を整える」スタイルです。
音源の内容を
 話し言葉から書き言葉へ直し、より正確な文体に整える
スタイルです。
助詞の補充や、ら抜き言葉の訂正等も行うので、非常に読みやすい文章に仕上がります。
また、話者の明らかなに言い間違いも訂正します。
もちろん、「あのー」「えー」「まあー」等は削除します。

例:
そういった具合で、無茶苦茶な難題を解決しなくてはならなかった。

 「整文」は、正しい書き言葉で書き起こすので、洗練された文書で読みやすさを重視するスタイルと言えるでしょう。
具体的には、書き起こされた文章をWebや印刷物等で公開する場合によく用いられるスタイルです。
また、テレビの報道番組に見られる字幕は「整文」スタイルが採用されている事が多いと思います。

3つのスタイルの例を並べると以下のようになります。
 素起こし: まあそういう具合にしてね、もう無茶苦茶な難問を、難題を、まあかい、解決しなくてはならなくって。
 ケバ取り: そういう具合にして、無茶苦茶な難題を解決しなくてはならなくって。
 整文:   そういった具合で、無茶苦茶な難題を解決しなくてならなかった。


実際に作業をしてみると、
 人が喋る時って、意外に無駄な音(「あのー」「えー」「まあー」等)や言い間違いが多いな
と感じます。
同時に、自分が喋る時は気を付けようと考えさせられます。。。

テープ起こしは、音源の内容を正確に聞き取り、正確に文字に起こす必要があり、そしてお客様の要望に沿ったスタイルに仕上げる文章力が求められる作業です。

ごく稀にですが、テープ起こしをして、その内容を翻訳するといった、テープ起こし+翻訳というご依頼を頂く事もあります。

弊社は、日本語・中国語のテープ起こしにも対応しております!
ご相談、お見積もりなど、弊社へのお問合せよりお気軽にお問合わせください!


筆者プロフィール

沖縄出身。

翻訳プロジェクトの新規開拓・提案・運用を担当しています。
進学を機に十代から沖縄を離れ、海外、名古屋、東京と転々としています。
特許事務所での経験、中国支社との連携を活かした翻訳サービスを日々思案中。