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[第66回] 中国の住宅事情(1)


今回より連載企画「中国の住宅事情」を開始いたします。

人が住む場所を、「家」(home)または「住宅」(house)と言いますが、厳密にはそれぞれの意味合いは異なります。

 家(home):人が住む建物
 住宅(house):人が住むための家や敷地(つまり家の周りの庭なども含まれる)

後者は、中国語で一般的に喋る時「房」または「房子」と言い、文書で書く場合は通常「住房」と書きます(日本語の「住宅」のに文字も散見されます)。

一概に「家」と言っても、様々なタイプがあります。通常販売されている「住宅」で、いわゆる分譲マンションは、一覧表の1~5のタイプがあります。

中国語

ピンイン

日本語

住房/住宅

zhù fáng /zhù zhái

住宅

1.商用房

shāng yòng fáng

商用房

2.经济适用房

jīng jì shì yòng fáng

経済適用房

3.限价房

xiàn jià fáng

限価房

4.回迁房

huí qiān fáng

回遷房

5.安置房

ān zhì fáng

安置房

商住两用房

shāng zhù liǎng yòng fáng

商住両用房

  • 農村部では、土地を持っている人がその土地で家を建てるケースもありますが、詳細を把握していないので一覧表から除外しました。

  • 最後の「商住両用房」とは、本来お店やオフィスを用途とするものですが、人が住んでも良いという商品なので、別のタイプとなります。

1.商用房

中国では商品房と呼ばれる普通住宅販売(分譲マンション等)が一般的ですが、実は商品房以外にも販売されている住宅もあります。
日本でも中所得層向けのサラリーマンが住宅を取得するために、以前は分譲型の公団住宅が販売されていました。
中国でも日本の分譲型公団住宅に相当する販売住宅があります。

2.経済適用房

中国では低所得者向けに販売されている経済適用房(または平価房)と呼ばれる分譲住宅があります。
これは中国の社会保障政策のひとつで「保障性住宅」とも呼ばれています。

この経済適用房はできるだけ建設コストを抑え、販売価格に含まれる利益率は3%を超えないように「経済適用住房管理弁法」(200711月施行)で決められています。
この経済適用房を建設する開発業者は入札で決められています。

経済適用房と商品房(普通住宅)は具体的にどのように違うのでしょうか?
まず経済適用房は部屋の広さは建築面積60㎡前後と法律で決められています。
また、経済適用房を購入するには収入制限があり、高所得者は経済適用房を購入することはできません。

経済適用房は不動産登記証はあるものの、一般市場での売買も制限されています。
経済適用房を取得して、不動産相場が高騰してから売却して利益を上げることは難しいようです。

3.限価房

限価房(price-limit housing)とはどのような分譲マンションでしょうか?
この限価房も低所得者・中所得者向けの分譲マンションです。中国政府の住宅政策としても利用される住宅で、政府機関が販売価格を決定しています。
そのため「政策制住宅」とも呼ばれます。

不動産開発会社は勝手に限価房の販売価格を決めることができません。
そのため「販売価格が制限された分譲マンション」という意味で、限価房と呼ばれています。
この限価房は社会保障を目的とした経済適用房よりも高く設定されていますが、普通住宅である商品房よりも20%25%ほど価格が低く設定されることが一般的です。
販売価格だけでなく、間取り(広さ)にも制限があるため「両限商品住房」と呼ばれることもあります。

この限価房の購入資格は、各地方政府によって決められています。
通常はその土地に戸籍(本籍)を持っていたり、社会保険を何年以上支払っている人など購入条件がつけられています。
転売については購入してから5年以内は売却できないなど制限がつけられているのが一般的です。

4.回遷房

さらに回遷房と呼ばれる住宅もあります。
実は回遷房は、ほとんど商品房と変わりません。
不動産開発会社が分譲マンションを建設する前に建設用地が必要になります。
中国では都市開発の過程で昔から住んでいた住民に立ち退き(中国語では「征地」や「動遷」と言います)させます。

この立ち退きにあった人たちは、補償金としてお金を受け取る場合もあれば、回遷房として商品房が割り当てられることもあります。
立ち退きした住民が現物として手に入れた商品房が回遷房です。

ただ、大きな住宅群(住宅小区)が建設された場合、一般販売される商品房に対して、明らかに回遷房用の住宅建物は品質や設備は劣っていると言われています。
回遷房の品質が良くないという点はあるものの、商品房と同じように市場で売却することも可能です。

5.安置房

これは4番の回遷房と同じですが、違いとして、回遷房の場合は一旦立ち退きした住民がその土地に建てられたマンションに戻って住むことに対して、この「安置房」は政府は別の土地に用意したマンションのことを言います。
北京市の場合、都心に住んでいた人が、かなり遠い郊外に移されるとこが多いです。


今回は以上の基本情報までです。

次回からは、「商品房」に焦点を絞って様々な中国事情や使用される用語・表現をまとめていきます。

弊社は、多くの土木・建築・内装関連の通訳・翻訳の経験があります!
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筆者プロフィール

北京出身。

大学進学を機に来日し、大学卒業後は日本で某大手商社に入社。学生時代も含め、通算16年あまり日本で暮らす。

現在、モシトランス北京では品質担当の責任者として、モシトランス東京では創業メンバーとして、北京と東京を行き来する忙しい日々を送っている。