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[第70回] 中国の住宅事情(3)


連載企画「中国の住宅事情」の第3回目です。

前回は中国住宅の建築構造に関する用語をまとめました。
今回は物件購入時によく使われる言葉をまとめます。

売買される物件

日本と大きく異なるところとして、中国ではほとんどの新築マンションでもスケルトン(構造体)で売られているという点です。
スケルトンのまま内装をするのは、日本で家を建てるくらい、インフィル(間仕切りや設備)をすべて考えなければならないこととなります。

中国語

ピンイン

日本語

一手房

yī shǒu fáng

新築物件

二手房

èr shǒu fáng

中古物件

毛坯房

máo pī fáng

スケルトン(住宅)

精装房

jīng zhuāng fáng

内装付き(住宅)

新房装修

xīn fáng zhuāng xiū

(新築の)内装

旧房翻修

jiù fáng fān xiū

(中古住宅の)リフォーム


通常の分譲マンションでは、その構造の違いによって、次のような呼び方があります。

中国語

ピンイン

日本語

平层

píng céng

リビングや寝室、水回りのすべての機能が同じ階にレイアウトされている物件。通常の天井高は2.8mです。

复式

fù shì

メゾネットタイプの一種。天井高3.3m2階にした形。

跃层

yuè céng

メゾネットタイプの一種。1住戸で2フロアを持つタイプ。天井高5.6mと、通常の2階建て。

LOFT

 

日本で言うロフトタイプ、2階に窓を設置しない。天井高は5.5m以上のものもあるが、メリットとして、購入時や管理費などの建築面積は2階部分含まない。

错层

cuò céng

基本は同じ平面でも、部屋と部屋のレベルが0.3m0.45mの差が付けられて、室内に23段の階段があるタイプ。


スケルトンで売られているのはマンションだけではありません。なんと戸建てでも同じです。
戸建て住宅もその構造の違いによって、次のような呼び方があります。

中国語

ピンイン

日本語

别墅

bié shù

文字そのものを解釈すると、「野外にあるセカンドハウス」となるが、中国の「民用建築設計用語基準」による定義では、「通常、庭付きの低層独立式住宅を指す」となっています。

独栋别墅

dú dòng bié shù

名前の通り庭から建築物まで、全て完全独立されている住宅です。一般的な戸建てのイメージと違わない。

双拼别墅

shuāng pīn bié shù

2棟の戸建てが横に繋がるタイプ。一面の外壁は共用となっている。

联排别墅

lián pái bié shù 

3棟以上の戸建てが繋がるタイプ。外壁は住戸全員共用するような、西洋諸国でよくみられるタイプ。

跃层别墅

yuè céng bié shù

リビングに吹き抜けを持つのが特長。メゾネットタイプとほぼ同じだが、高層マンションではないのが特長。

叠拼别墅

dié pīn bié shù

2棟の戸建てが縦に繋がるタイプ。真ん中のスラブを共有する。通常下の棟は2階+地下室付きで、上の棟は2階+ロフト付き。

なぜスケルトンなのか

歴史的な原因について、無印良品の家のブログをご参考ください。

最近の見方として、ネット上で次のような意見があります。

【需要による】

  1. ローンで家を買う場合、スケルトンの住宅を選ぶと、内装に掛ける費用を予算に合わせることが可能。
  2. 個性的な内装をしたい、時間的にも余裕がある場合、スケルトンがいい。
  3. 新婚で23年内に子供をつくる予定がある場合、内装付きがいい。建材は環境基準をクリアしているから。
  4. 仕事が忙しくて、内装にエネルギーをかけられないホワイトカラーの方は、内装付きがいい。一時的(10年程度?)しか住まない家なので、内装に時間をかける必要はない。

【開発業者による】

開発業者によって、内装の質は大きく開ける。大手開発業者の場合、内装付きで作られた住宅は信用できるが、中小の場合は、手抜き工事がやまない。

【中古の場合は】

  1. 新築ではなく、中古の物件を買う場合、内装付きを考えない方がいい。
    中古の内装スタイルはもう古い。
  2. 中古物件の内装質は購入時に判断できないため、入居してから分かると、余分な費用がかかる。
  3. 中古物件の内装付きは、価格評価しにくい。

スケルトンの割合は

今後の傾向として、スケルトンの割合が年々降下し、内装付きの物件が増えていくようです。
これは国の政策と大きく関与しています。

中国政府は環境保全などへの考慮により、内装付き住宅を推進しています。
なぜなら、内装付き住宅の場合は、粉じんや騒音を減らし、内装材の節約、建築ゴミの削減などのメリットがあるという考えがあるようです。
政府は2016年に住宅の内装に関する検収規則や内装付き住宅の全面推進に関する通知を発布して、翌年の2017年に、「建築業発展の第十三回五ヵ年計画」にて、2020年に着工する住宅の30%が内装付きと明確な指示が出されました。

ちなみに、2016年から2019年までの現状は、下図のように、スケルトンは88%の割合から67.2%の割合に減り、内装付きの割合は12%から32.8%と増えていることがわかります。


一方、海外ではどうでしょうか。2018年のデータですが、中国の内装付き物件が約28%に対して、先進諸国の北米、ヨーロッパ、日本はどちらも80%を超えています。

建築や内装に非常に興味があって、どうしても自分の個性を出したい方はこういった均一な製品化に不満を覚えるかもしれませんが、しかし中国の現状を見ると、エネルギーをかけず、安心して住める住宅を求めている人の数も少なくないはずです。

その中国の現状はどういうことかについて、次回触れればと思います。
では、また次回。

 

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筆者プロフィール

北京出身。

大学進学を機に来日し、大学卒業後は日本で某大手商社に入社。学生時代も含め、通算16年あまり日本で暮らす。

現在、モシトランス北京では品質担当の責任者として、モシトランス東京では創業メンバーとして、北京と東京を行き来する忙しい日々を送っている。