今回は上海戯劇学院の邵旻先生が発表された中国の古典文献にみる染色技法についてご紹介いたします。
※「中国伝統色彩学術年会」については用語整理(1)をご参照ください。
邵先生の発表内容
基本用語
中国語 |
1.彰施。比较经典的出处来源于《尚书·益稷》,上面写到:“以五采彰施于五色,作服,汝明。”彰施的概念,是指用颜料或者染料,在白色织物上染成鲜明色彩的过程。 2.技艺。技艺一方面可以通过传承实践来获得,类似于非遗这一领域。另外一方面,古法工艺可以通过文献阅读来获得线索。今天,我的话题就从文献展开。 |
日本語訳 |
1.彰施(しょうせ)。出所は『尚書・益稷』、こう書かれている。「五采を以てし、彰らかに五色を施して、服と作[せ]ん。汝明らかにせよ。」彰施の意味は、絵の具や染料で、白い織物に鮮やかな色を染め上げる過程である。 2.技芸(ぎげい)。工芸のこと。工芸は実践の伝承によって得られる、無形文化財の類である。また、古法工芸は文献を通して手がかりを得ることもできる。本日の話は文献から展開する。 |
単語 |
彰施(zhāng shī):(色の)仕上げ、施す。 |
技芸(jì yì):美術・工芸などの芸術に関する技術のこと。 |
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尚書(しょうしょ):五経の一である『書経』の古名。 |
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益稷(えきしょく):『書経』の一篇。 |
以下、11冊の文献に関する紹介です。
中国語 |
第一类文献:染料与所染色彩 《说文解字》的“草部”和“木部”涉及一些染草与染料植物的名称。 |
日本語訳 |
第一類の文献:染料と染められる色 「説明文解字」の「草部」と「木部」に、一部染色草と染料植物の名称がある。 |
中国語 |
第二类文献:染料图像与图谱 《本草品汇精要》这本书里的图谱和图像基本是以《本草》的方式来排序记录的,除了“玉石部”之外,还可以在“草部”、“木部”、“果部”中看到大量染料植物的图像信息。 |
日本語訳 |
第二類の文献:染料の画像と図譜 『本草品匯精要』の図譜と絵は基本的に「本草」の順番と記録方法を用いている。「玉石部」のほか、「草部」、「木部」、「果部」にも大量の染料植物の絵を見ることができる。 |
中国語 |
第三类文献:染色工艺和流程 《齐民要术》里有御黄染法,以及红花、蓝草、紫草、地黄的种植及工艺流程的描述,非常详细。 |
日本語訳 |
第三類の文献:染色技術とプロセス 『斉民要術』には「御黄染法」や、紅花、藍草、紫草、黄地の栽培及び加工プロセスに関する詳しい記述がある。 |
中国語 |
以上的书籍只是冰山一角的文献阅读里的一小部分。在整个文献阅读的过程当中,我获得了三方面的信息。第一方面是对文献内容进行考辨。读文献过程中,我会发现有很多相互矛盾、相互补充或者是相互不符合的地方,这个时候需要我们继续寻找线索,甚至通过其他途径,如实物、跨学科研究等,验证到底哪些信息是真的,哪些可能是不符合常理的。 |
日本語訳 |
以上の書籍は氷山の一角といえる文献読みのほんの一部である。文献を読んでいるなか、三つの情報を得たといえる。ひとつは文献の内容の考察と識別である。文献の内容に、矛盾だったり、補足だったり、齟齬があったりというところがたくさんあることが読んでいるうちに分かった。この場合は手がかりを探し続けるか、実物検証やほかの学科で検証したりして、情報の真偽を見極める必要がある。 |
中国語 |
《多能鄙事》里有一个条目叫“染砖褐”,书上写的是“用江茶染”,很多人读这篇文献的时候,不知道江茶是什么,搜索百度或者是其他文献的时候也查不到江茶是什么。当我阅读比这一本成书更早的书时,发现里面也有一条一模一样的条目,写的是“用红茶染”,经过我自己的染色实践以后发现,用红茶染的确可以染出砖褐色。《多能鄙事》这个版本的一个字的误写,给我们带来了很多困扰。这也是我为什么一直坚持用原古籍来阅读,用不同版本文献交叉阅读的原因。 |
日本語訳 |
『多能鄙事』に「レンガ茶染め」という項目がある。本には「江茶で染める」と書かれているが、江茶はなんなのかはほとんどの人はわからない。百度や他の文献を検索しても江茶を見つからない。私はこの本よりも早い書物を読んだ際に、中に同じ項目があった。そこには「紅茶で染める」と書かれているから、実際に染色してみて、紅茶でレンガ茶という色に染められることがわかった。つまり『多能鄙事』の誤記により悩まされたのだった。この例も、私がなぜ原籍を読み続ける、さらに異なる版を何冊も読む理由である。 |
今回は以上です。
次回は、中国人民大学の王文娟教授が発表された「道家の色彩観」についてご紹介しようと思います。
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筆者プロフィール
北京出身。
大学進学を機に来日し、大学卒業後は日本で某大手商社に入社。学生時代も含め、通算16年あまり日本で暮らす。
現在、モシトランス北京では品質担当の責任者として、モシトランス東京では創業メンバーとして、北京と東京を行き来する忙しい日々を送っている。