はじめに
みなさん、こんにちは。品質担当のSです。
どうすればモシトランスのことを、より多くの人に知ってもらえるだろうかと悩んだ末、翻訳の現場での様子をあるがままにお伝えし続ければ、いろんなきっかけで多くの人の目に触れ、結果的にモシトランスのことを知ってもらえるようになるのではないだろうかと考えました。
というわけで、本日より「事例紹介ブログ」と題して、様々な事例を紹介してまいります。どうぞ、よろしくお願いいたします。
さて、記念すべき第1回は、野菜や植物の栽培方法に関する翻訳をした時のお話です。
今回の翻訳対象
野菜や植物の栽培方法に関する説明文です。こんな感じの表を40個ほど翻訳していきます。
名称 | 明日叶 |
---|---|
别名 | 明日叶_明日草_八丈草_咸草_神仙草_长寿草_长寿菜_蔬菜_野菜 |
原产地 | 日本 |
类型 | 伞形科当归属 |
花期 | 花果期春秋 |
颜色 | 花色黄绿色 |
尺寸规格 | 直径≥10cm,高度≥15cm |
土壤 | 泥炭土或配好的营养土 |
光照 | 不耐强光,置于温和散射光下栽培 |
浇水 | 土壤表面干燥时浇一次透水,忌积水 |
施肥 | 把花肥按照使用说明稀释,平均每月施肥1-2次 |
修剪 | 及时剪除衰老部分,枯叶 |
日本語だと、こんなにも違うのか
中国語だと、植物の栽培方法であろうと、機械の使い方であろうと、「説明文」の類に入ります。なので、何をどうするかの説明ができたら、それでOKです。
ところが、ネットで調べていくうちに、日本語の場合は中国語とは随分と違うということがわかり、とても驚きました。例えば、「栽培」という固い漢語も使わなくはないですが、「育て方」のような柔らかいイメージの和語が多く使われていました。また、人に語り掛けていることが強く意識されていて、「~には注意しましょう」「きれいな姿に仕上げましょう」「カーテン越しの窓辺に置きましょう」という感じの表現が多かったです。
そして、生産農家向けの文章よりも、一般消費者向け(家庭菜園など)の文章の方が、より柔らかい文章となっていました。
さて、どうしよう
まずは、どちらの文章スタイルにするのかを決めないといけません。40個も同じような表が続くわけですから、手戻りが発生しないようにと、どうしても慎重になってしまいます。
どうしようかと悩んでいたところ、項目欄の「サイズ・規格」というのを見て、これはきっと出荷前の植物の状態を言っているだと思い、中国語の文章ほど固くなく、家庭菜園用の文章ほど柔らかくはない文章にすることに決めました。これで、文章スタイルの方針は決まりました。
次に悩んだのが「別名」
植物には、正式な「学名」以外にも、「別名」と「流通名」が多く存在します。当然ながら、中国での別名と日本での別名は、まったく違うはずです。
今回の翻訳対象(=原文の原稿)の目的は、中国植物事典を作るためではなく、お花や野菜の生産のためだろうと推測して、原文に記載している「別名」の欄の部分は、すべて無視して日本語の別名を調べて記入することに決めました。これで、別名問題もクリアです。
他にもこんなに気を遣います
書き始めるとキリがないのですが、ざっと、こんなことに気を付けて翻訳しました。
- 植物名は、中国語→学名のラテン語→日本語という順に調べて、正確な訳語を選びました。そして、植物名はカタカナにしました。
- 別名と別名の間になぜ「_」(アンダーバー)を使うのかは意味不明でしたが、そのまま使うことにしました。さらに、別名の最後の部分は「この植物は野菜で、山菜でもある」と書いていますが、同じく「_」(アンダーバー)の後に続いています。これは、そのままにしました。
- 項目欄の「サイズ規格」は、単語と単語を中黒やスペースで区切ることなく書いてあり、さらに「規格」と書いてあることに多少違和感を感じたので、「出荷サイズ・規格」としました。
- 中国語の「強光」という表現を、日本語ではよくある「直射日光」に変えました。
- 「用土」「日照」「水遣り」「肥料」「剪定」の各項目は、日本語特有の「~しましょう」を採用しました。
完成!
というわけで、最終的な訳文は、こんな風にしました。
名称 | アシタバ |
---|---|
別名 | 明日葉_明日草_八丈草_野菜_山菜 |
原産地 | 日本 |
タイプ | セリ科シシウド属 |
開花期 | 開花・結実の時期:春、秋 |
花の色 | 花の色:黄緑 |
出荷サイズ・規格 | 直径≥10cm,高さ≥15cm |
用土 | 泥炭土または混合された培養土を使いましょう |
日照 | 直射日光に弱いため、温和な散乱光の場所に置きましょう |
水遣り | 用土の表面が乾いた時にたっぷりと水やりを行うが、水はけをよくしましょう |
肥料 | 肥料は使用説明書通りに希釈して、月に1-2回追肥しましょう |
剪定 | 古い枝や枯れ葉を取り除きましょう |
このように、当社の翻訳は単に言葉を別の言語に置き換えるだけではなく、社名に込めた想いに綴った通り「書き手や話し手の想い全てを、異なる母国語を使っている人たちにも届けたい」という想いに基づき、日々翻訳をしております。
筆者プロフィール
北京出身。
大学進学を機に来日し、大学卒業後は日本で某大手商社に入社。学生時代も含め、通算16年あまり日本で暮らす。
現在、モシトランス北京では品質担当の責任者として、モシトランス東京では創業メンバーとして、北京と東京を行き来する忙しい日々を送っている。