今回のお題
翻訳プロジェクト担当のUです。
今回は、以前の記事「一文の適切な長さ」にも連動する内容です。
これまで長年「翻訳」に携わってきました。
私自身が実際に翻訳することはごく稀で、翻訳作業は専門の翻訳者が担当します。
私の担当は、お客様と翻訳者との「懸け橋」といったポジションです。
いわゆる「翻訳コーディネーター」「翻訳プロジェクトマネージャー」と称されるポジションです。
※今回の記事では「翻訳プロジェクトマネージャー」(以下「PM」)とします。
お客様から翻訳のご依頼を受けた際、PMが原稿の隅から隅まで目を通すという事はほぼありません。
さっと「ななめ読み」して原稿の概要を把握する程度です。
一方、実際に翻訳作業を担当する翻訳者は、もちろん原稿の隅々まで読みます。
その際、
原稿の意味が分かりづらく、翻訳するのに苦労している。。。
という声を翻訳者から聞くことがたびたびあります。
この場合、
- 一文が長い
- 主語が不明確
- 書き手のクセが強い
等という事が挙げられます。
誰が誰のために翻訳するか
まず、翻訳の際に、
ソース言語を母語とする者が翻訳する
ターゲット言語を母語とする者が翻訳する
どちらが良いかを考えてみましょう。
ソース言語を母語とする者が翻訳する場合:
日本語から中国語への翻訳の場合、日本語ネイティブが翻訳するケースです。
メリット:原文を正確に理解できる
デメリット:原文に引っ張られすぎて、たどたどしい翻訳になる場合がある
ターゲット言語を母語とする者が翻訳する場合:
日本語から中国語への翻訳の場合、中国語ネイティブが翻訳するケースです。
メリット:なめらかな翻訳になる
デメリット:原文を誤って理解してしまう場合がある
賛否両論あると思いますが、
ターゲット言語を母語とする者が翻訳する方が良い
(日本語から中国語への翻訳の場合、中国語ネイティブが翻訳する)
というのが私の意見です。
これは、
翻訳された言語のネイティブを対象として、翻訳している
からです。
つまり「なめらかな翻訳」が重要だからです。
わかりやすい文章
では、
原稿:日本語
翻訳者:日本語を母語としない者
を例に進めます。
役所は駅東口を出て徒歩5分のところにありますが、正面入口は改装工事を行っていますので、駐車場側の入口からお入りください。
日本語ネイティブでも、さっと読んだだけでは少し分かりにくいです。
これを、
役所は駅の東口から歩いて5分で着きます。
しかし、正面入口は工事中で使えません。
駐車場にある入口から入ってください。
と書き換えると、グッと分かりやすくなります。
「わかりやすい文章」とは「丁寧な文章」「稚拙な文章」というわけではありません。
難しい専門用語や、分かりにくい比喩表現など、日本語ネイティブが読んでも難しく感じる文章はたくさんあります。
日本語ネイティブでもそのように感じてしまう文章であれば、翻訳者(=日本語を母語としない者)にとってはなおさら分かりにくいでしょう。
私の経験上、原稿を変換して(=わかりやすい文章へ書き直して)翻訳者へ依頼したことはありません。
これは、
- 個人的な主観により、原稿の内容を歪曲してしまう恐れがある
- 納期までのスケジュール的に余裕がない
が主な理由です。
個人的には、翻訳する前に原稿を変換する(=わかりやすい文章へ書き直す)ことで、翻訳の品質向上につながるのではと考えています。
機会があれば一度試してみたいものです。
【補足】調べてみたところ、わかりやすい日本語への変換ツール(有料)もあるようです。
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筆者プロフィール
沖縄出身。
翻訳プロジェクトの新規開拓・提案・運用を担当しています。
進学を機に十代から沖縄を離れ、海外、名古屋、東京と転々としています。
特許事務所での経験、中国支社との連携を活かした翻訳サービスを日々思案中。